雪の女王 / The Snow Queen — czytaj online. Strona 3

Japońsko-angielska dwujęzyczna książka

ハンス・クリスチャン・アンデルセン

雪の女王

Hans Christian Andersen

The Snow Queen

そこで、カイちゃんにあって、ながいながい道中をして自分をさがしにやってきたことをきき、あれなりかえらないので、どんなにみんなが、かなしんでいるかしったなら、こうしてきてくれたことを、どんなによろこぶでしょう。

He would certainly be glad to see her, and to hear what a long distance she had come for his sake, and to know how sorry they had been at home because he did not come back.

まあ、そうおもうと、うれしいし、しんぱいでした。

Oh what joy and yet fear she felt!

さて、からすとゲルダとは、かいだんの上にのぼりました。ちいさなランプが、たなの上についていました。そして、ゆか板のまん中のところには、飼いならされた女がらすが、じっとゲルダを見て立っていました。ゲルダはおばあさまからおそわったように、ていねいにおじぎしました。

They were now on the stairs, and in a small closet at the top a lamp was burning. In the middle of the floor stood the tame crow, turning her head from side to side, and gazing at Gerda, who curtseyed as her grandmother had taught her to do.

「かわいいおじょうさん。わたしのいいなずけは、あなたのことを、たいそうほめておりました。」と、そのやさしいからすがいいました。「あなたの、そのごけいれきとやらもうしますのは、ずいぶんおきのどくなのですね。さあ、ランプをおもちください。ごあんないしますわ。このところをまっすぐにまいりましょう。もうだれにもあいませんから。」

“My betrothed has spoken so very highly of you, my little lady,” said the tame crow, “your life-history, Vita, as it may be called, is very touching. If you will take the lamp I will walk before you. We will go straight along this way, then we shall meet no one.”

「だれか、わたしたちのあとから、ついてくるような気がすることね。」と、なにかがそばをきゅうに通ったときに、ゲルダはいいました。それは、たてがみをふりみだして、ほっそりとした足をもっている馬だの、それから、かりうどだの、馬にのったりっぱな男の人や、女の人だのの、それがみんなかべにうつったかげのように見えました。

“It seems to me as if somebody were behind us,” said Gerda, as something rushed by her like a shadow on the wall, and then horses with flying manes and thin legs, hunters, ladies and gentlemen on horseback, glided by her, like shadows on the wall.

「あれは、ほんの夢なのですわ。」と、からすがいいました。「あれらは、それぞれのご主人たちのこころを、りょうにさそいだそうとしてくるのです。つごうのいいことに、あなたは、ねどこの中であのひとたちのお休みのところがよくみられます。そこで、どうか、あなたがりっぱな身分におなりになったのちも、せわになったおれいは、おわすれなくね。」

“They are only dreams,” said the crow, “they are coming to fetch the thoughts of the great people out hunting.” “All the better, for we shall be able to look at them in their beds more safely. I hope that when you rise to honor and favor, you will show a grateful heart.”

「それはいうまでもないことだろうよ。」と、森のからすがいいました。

“You may be quite sure of that,” said the crow from the forest.

さて、からすとゲルダとは、一ばんはじめの広間にはいっていきました。そこのかべには、花でかざった、ばら色のしゅすが、上から下まで、はりつめられていました。そして、ここにもりょうにさそうさっきの夢は、もうとんで来ていましたが、あまりはやくうごきすぎて、ゲルダはえらい殿とのさまや貴婦人きふじん方を、こんどはみることができませんでした。

They now came into the first hall, the walls of which were hung with rose-colored satin, embroidered with artificial flowers. Here the dreams again flitted by them but so quickly that Gerda could not distinguish the royal persons.

ひろまから、ひろまへ行くほど、みどとにできていました。ただもうあまりのうつくしさに、まごつくばかりでしたが、そのうち、とうとうねままではいっていきました。

Each hall appeared more splendid than the last, it was enought to bewilder any one. At length they reached a bedroom.

そこのてんじょうは、高価なガラスの葉をひろげた、大きなしゅろの木のかたちになっていました。そして、へやのまんなかには、ふたつのベッドが、木のじくにあたる金のふとい柱につりさがっていて、ふたつとも、ゆりの花のようにみえました。

The ceiling was like a great palm-tree, with glass leaves of the most costly crystal, and over the centre of the floor two beds, each resembling a lily, hung from a stem of gold.

そのベッドはひとつは白くて、それには王女がねむっていました。もうひとつのは赤くて、そこにねむっている人こそ、ゲルダのさがすカイちゃんでなくてはならないのです。ゲルダは赤い花びらをひとひら、そっとどけると、そこに日やけしたくびすじが見えました。――ああ、それはカイちゃんでした。

One, in which the princess lay, was white, the other was red; and in this Gerda had to seek for little Kay. She pushed one of the red leaves aside, and saw a little brown neck. Oh, that must be Kay!

――ゲルダは、カイちゃんの名をこえ高くよびました。ランプをカイちゃんのほうへさしだしました。……夢がまた馬にのって、さわがしくそのへやの中へ、はいってきました。……その人は目をさまして、顔をこちらにむけました。ところが、それはカイちゃんではなかったのです。

She called his name out quite loud, and held the lamp over him. The dreams rushed back into the room on horseback. He woke, and turned his head round, it was not little Kay!

いまは王子となったその人は、ただ、くびすじのところが、カイちゃんににていただけでした。でもその王子はわかくて、うつくしい顔をしていました。王女は白いゆりの花ともみえるベッドから、目をぱちくりやって見あげながら、たれがそこにきたのかと、おたずねになりました。そこでゲルダは泣いて、いままでのことや、からすがいろいろにつくしてくれたことなどを、のこらず王子に話しました。

The prince was only like him in the neck, still he was young and pretty. Then the princess peeped out of her white-lily bed, and asked what was the matter. Then little Gerda wept and told her story, and all that the crows had done to help her.

「それは、まあ、かわいそうに。」と、王子と王女とがいいました。そして、からすをおほめになり、じぶんたちはけっして、からすがしたことをおこりはしないが、二どとこんなことをしてくれるな、とおっしゃいました。それでも、からすたちは、ごほうびをいただくことになりました。

“You poor child,” said the prince and princess; then they praised the crows, and said they were not angry for what they had done, but that it must not happen again, and this time they should be rewarded.

「おまえたちは、すきかってに、そとをとびまわっているほうがいいかい。」と、王女はたずねました。「それとも、宮中おかかえのからすとして、台所のおあまりは、なんでもたべることができるし、そういうふうにして、いつまでもごてんにいたいとおもうかい。」

“Would you like to have your freedom?” asked the princess, “or would you prefer to be raised to the position of court crows, with all that is left in the kitchen for yourselves?”

そこで、二わのからすはおじぎをして、自分たちが、としをとってからのことをかんがえると、やはりごてんにおいていただきたいと、ねがいました。そして、
「だれしもいっていますように、さきへいってこまらないように、したいものでございます。」と、いいました。

Then both the crows bowed, and begged to have a fixed appointment, for they thought of their old age, and said it would be so comfortable to feel that they had provision for their old days, as they called it.

王子はそのとき、ベッドから出て、ゲルダをそれにねかせ、じぶんは、それなりねようとはしませんでした。

And then the prince got out of his bed, and gave it up to Gerda,—he could do no more; and she lay down.

ゲルダはちいさな手をくんで、「まあ、なんといういい人や、いいからすたちだろう。」と、おもいました。それから、目をつぶって、すやすやねむりました。

She folded her little hands, and thought, “How good everyone is to me, men and animals too;” then she closed her eyes and fell into a sweet sleep.

すると、また夢がやってきて、こんどは天使のような人たちが、一だいのそりをひいてきました。その上には、カイちゃんが手まねきしていました。けれども、それはただの夢だったので、目をさますと、さっそくきえてしまいました。

All the dreams came flying back again to her, and they looked like angels, and one of them drew a little sledge, on which sat Kay, and nodded to her. But all this was only a dream, and vanished as soon as she awoke.

あくる日になると、ゲルダはあたまから、足のさきまで、絹やびろうどの着物でつつまれました。そしてこのままお城にとどまっていて、たのしくくらすようにとすすめられました。でも、ゲルダはただ、ちいさな馬車と、それをひくうまと、ちいさな一そくの長ぐつがいただきとうございますと、いいました。それでもういちど、ひろい世界へ、カイちゃんをさがしに出ていきたいのです。

The following day she was dressed from head to foot in silk and velvet, and they invited her to stay at the palace for a few days, and enjoy herself, but she only begged for a pair of boots, and a little carriage, and a horse to draw it, so that she might go into the wide world to seek for Kay.

さて、ゲルダは長ぐつばかりでなく、マッフまでもらって、さっぱりと旅のしたくができました。いよいよでかけようというときに、げんかんには、じゅん金のあたらしい馬車が一だいとまりました。王子と王女の紋章もんしょうが、星のようにひかってついていました。ぎょしゃや、べっとうや、おさきばらいが――そうです、おさきばらいまでが――金の冠かんむりをかぶってならんでいました。

And she obtained, not only boots, but also a muff, and she was neatly dressed; and when she was ready to go, there, at the door, she found a coach made of pure gold, with the coat-of-arms of the prince and princess shining upon it like a star, and the coachman, footman, and outriders all wearing golden crowns on their heads.

王子と王女は、ごじぶんで、ゲルダをたすけて馬車にのらせ、ぶじにいってくるようにおっしゃいました。

The prince and princess themselves helped her into the coach, and wished her success.

もういまはけっこんをすませた森のからすも、三マイルさきまで、みおくりについてきました。このからすは、うしろむきにのっていられないというので、ゲルダのそばにすわっていました。めすのほうのからすは、羽根をばたばたやりながら、門のところにとまっていました。おくっていかないわけは、あれからずっとごてんづとめで、たくさんにたべものをいただくせいか、ひどく頭痛ずつうがしていたからです。

The forest crow, who was now married, accompanied her for the first three miles; he sat by Gerda’s side, as he could not bear riding backwards. The tame crow stood in the door-way flapping her wings. She could not go with them, because she had been suffering from headache ever since the new appointment, no doubt from eating too much.

その馬車のうちがわは、さとうビスケットでできていて、こしをかけるところは、くだものや、くるみのはいったしょうがパンでできていました。

The coach was well stored with sweet cakes, and under the seat were fruit and gingerbread nuts.

「さよなら、さよなら。」と、王子と王女がさけびました。するとゲルダは泣きだしました。――からすもまた泣きました。――さて、馬車が三マイル先のところまできたとき、こんどはからすが、さよならをいいました。この上ないかなしいわかれでした。

“Farewell, farewell,” cried the prince and princess, and little Gerda wept, and the crow wept; and then, after a few miles, the crow also said “Farewell,” and this was the saddest parting.

からすはそこの木の上にとびあがって、馬車がいよいよ見えなくなるまで、黒いつばさを、ばたばたやっていました。馬車はお日さまのようにかがやきながら、どこまでもはしりつづけました。

However, he flew to a tree, and stood flapping his black wings as long as he could see the coach, which glittered in the bright sunshine.

第五のお話。おいはぎのこむすめ

Fifth Story: Little Robber-Girl

それから、ゲルダのなかまは、くらい森の中を通っていきました。ところが、馬車の光は、たいまつのようにちらちらしていました。

The coach drove on through a thick forest, where it lighted up the way like a torch, and dazzled the eyes of some robbers, who could not bear to let it pass them unmolested.

それが、おいはぎどもの目にとまって、がまんがならなくさせました。
「やあ、金きんだぞ、金だぞ。」と、おいはぎたちはさけんで、いちどにとびだしてきました。馬をおさえて、ぎょしゃ、べっとうから、おさきばらいまでころして、ゲルダを馬車からひきずりおろしました。

“It is gold! it is gold!” cried they, rushing forward, and seizing the horses. Then they struck the little jockeys, the coachman, and the footman dead, and pulled little Gerda out of the carriage.

「こりゃあ、たいそうふとって、かわいらしいむすめだわい。きっと、年中くるみの実みばかりたべていたのだろう。」と、おいはぎばばがいいました。女のくせに、ながい、こわいひげをはやして、まゆげが、目の上までたれさがったばあさんでした。

“She is fat and pretty, and she has been fed with the kernels of nuts,” said the old robber-woman, who had a long beard and eyebrows that hung over her eyes.

「なにしろそっくり、あぶらののった、こひつじというところだが、さあたべたら、どんな味がするかな。」
そういって、ばあさんは、ぴかぴかするナイフをもちだしました。きれそうにひかって、きみのわるいといったらありません。

“She is as good as a little lamb; how nice she will taste!” and as she said this, she drew forth a shining knife, that glittered horribly.

「あッ。」 そのとたん、ばあさんはこえをあげました。その女のせなかにぶらさがっていた、こむすめが、なにしろらんぼうなだだっ子で、おもしろがって、いきなり、母親の耳をかんだのです。
「このあまあ、なにょをする。」と、母親はさけびました。おかげで、ゲルダをころす、はなさきをおられました。

“Oh!” screamed the old woman the same moment; for her own daughter, who held her back, had bitten her in the ear. She was a wild and naughty girl, and the mother called her an ugly thing, and had not time to kill Gerda.

「あの子は、あたいといっしょにあそぶのだよ。」と、おいはぎのこむすめは、いいました。
「あの子はマッフや、きれいな着物をあたいにくれて、晩にはいっしょにねるのだよ。」
こういって、その女の子は、もういちど、母親の耳をしたたかにかみました。それで、ばあさんはとびあがって、ぐるぐるまわりしました。おいはぎどもは、みんなわらって、
「見ろ、ばばあが、がきといっしょにおどっているからよ。」と、いいました。

“She shall play with me,” said the little robber-girl; “she shall give me her muff and her pretty dress, and sleep with me in my bed.” And then she bit her mother again, and made her spring in the air, and jump about; and all the robbers laughed, and said, “See how she is dancing with her young cub.”

「馬車の中へはいってみようや。」と、おいはぎのこむすめはいいました。このむすめは、わんぱくにそだって、おまけにごうじょうっぱりでしたから、なんでもしたいとおもうことをしなければ、気がすみませんでした。

“I will have a ride in the coach,” said the little robber-girl; and she would have her own way; for she was so self-willed and obstinate.

それで、ゲルダとふたり馬車にのりこんで、きりかぶや、石のでている上を通って、林のおくへ、ふかくはいっていきました。おいはぎのこむすめは、ちょうどゲルダぐらいの大きさでしたが、ずっと、きつそうで、肩つきががっしりしていました。どす黒ぐろいはだをして、その目はまっ黒で、なんだかかなしそうに見えました。女の子は、ゲルダのこしのまわりに手をかけて、

She and Gerda seated themselves in the coach, and drove away, over stumps and stones, into the depths of the forest. The little robber-girl was about the same size as Gerda, but stronger; she had broader shoulders and a darker skin; her eyes were quite black, and she had a mournful look. She clasped little Gerda round the waist, and said,—

「あたい、おまえとけんかしないうちは、あんなやつらに、おまえをころさせやしないことよ。おまえはどこかの王女じゃなくて。」と、いいました。

“They shall not kill you as long as you don’t make us vexed with you. I suppose you are a princess.”

「いいえ、わたしは王女ではありません。」と、ゲルダはこたえて、いままでにあったできごとや、じぶんがどんなに、すきなカイちゃんのことを思っているか、ということなぞを話しました。

“No,” said Gerda; and then she told her all her history, and how fond she was of little Kay.

おいはぎのむすめは、しげしげとゲルダを見て、かるくうなずきながら、
「あたいは、おまえとけんかしたって、あのやつらに、おまえをころさせやしないよ。そんなくらいなら、あたい、じぶんでおまえをころしてしまうわ。」と、いいました。
それからむすめは、ゲルダの目をふいてやり、両手をうつくしいマッフにつけてみましたが、それはたいへん、ふっくりして、やわらかでした。

The robber-girl looked earnestly at her, nodded her head slightly, and said, “They sha’nt kill you, even if I do get angry with you; for I will do it myself.” And then she wiped Gerda’s eyes, and stuck her own hands in the beautiful muff which was so soft and warm.

さあ、馬車はとまりました。そこはおいはぎのこもる、お城のひろ庭でした。その山塞さんさいは、上から下までひびだらけでした。そのずれたわれ目から、大がらす小がらすがとびまわっていました。大きなブルドッグが、あいてかまわず、にんげんでもくってしまいそうなようすで、高くとびあがりました。でも、けっしてほえませんでした。ほえることはとめられてあったからです。

The coach stopped in the courtyard of a robber’s castle, the walls of which were cracked from top to bottom. Ravens and crows flew in and out of the holes and crevices, while great bulldogs, either of which looked as if it could swallow a man, were jumping about; but they were not allowed to bark.

大きな、煤すすけたひろまには、煙がもうもうしていて、たき火が、赤あかと石だたみのゆか上でもえていました。煙はてんじょうの下にたちまよって、どこからともなくでていきました。大きなおなべには、スープがにえたって、大うさぎ小うさぎが、あぶりぐしにさして、やかれていました。

In the large and smoky hall a bright fire was burning on the stone floor. There was no chimney; so the smoke went up to the ceiling, and found a way out for itself. Soup was boiling in a large cauldron, and hares and rabbits were roasting on the spit.

「おまえは、こん夜は、あたいや、あたいのちいさなどうぶつといっしょにねるのよ。」と、おいはぎのこむすめがいいました。
ふたりはたべものと、のみものをもらうと、わらや、しきものがしいてある、へやのすみのほうへ行きました。

“You shall sleep with me and all my little animals to-night,” said the robber-girl, after they had had something to eat and drink. So she took Gerda to a corner of the hall, where some straw and carpets were laid down.

その上には、百ぱよりも、もっとたくさんのはとが、ねむったように、木摺きずりや、とまり木にとまっていましたが、ふたりの女の子がきたときには、ちょっとこちらをむきました。

Above them, on laths and perches, were more than a hundred pigeons, who all seemed to be asleep, although they moved slightly when the two little girls came near them.

「みんな、このはと、あたいのものなのよ。」と、おいはぎのこむすめはいって、てばやく、てぢかにいた一わをつかまえて、足をゆすぶったので、はとは、羽根をばたばたやりました。

“These all belong to me,” said the robber-girl; and she seized the nearest to her, held it by the feet, and shook it till it flapped its wings.

「せっぷんしておやりよ。」と、いって、おいはぎのこむすめは、それを、ゲルダの顔になげつけました。

“Kiss it,” cried she, flapping it in Gerda’s face.

「あすこにとまっているのが、森のあばれものさ。」と、そのむすめは、かべにあけたあなに、うちこまれたとまり木を、ゆびさしながら、また話しつづけました。

“There sit the wood-pigeons,” continued she, pointing to a number of laths and a cage which had been fixed into the walls, near one of the openings.

「あれは二わとも森のあばれものさ。しっかり、とじこめておかないと、すぐにげていってしまうの。ここにいるのが、昔からおともだちのベーよ。」こういって、女の子は、ぴかぴかみがいた、銅どうのくびわをはめたままつながれている、一ぴきのとなかいを、つのをもってひきだしました。

“Both rascals would fly away directly, if they were not closely locked up. And here is my old sweetheart ‘Ba;’” and she dragged out a reindeer by the horn; he wore a bright copper ring round his neck, and was tied up.

「これも、しっかりつないでおかないと、にげていってしまうの。だから、あたいはね、まい晩よくきれるナイフで、くびのところをくすぐってやるんだよ。すると、それはびっくりするったらありゃしない。」

“We are obliged to hold him tight too, or else he would run away from us also. I tickle his neck every evening with my sharp knife, which frightens him very much.”

そういいながら、女の子はかべのわれめのところから、ながいナイフをとりだして、それをとなかいのくびにあてて、そろそろなでました。かわいそうに、そのけものは、足をどんどんやって、苦しがりました。むすめは、おもしろそうにわらって、それなりゲルダをつれて、ねどこに行きました。

And then the robber-girl drew a long knife from a chink in the wall, and let it slide gently over the reindeer’s neck. The poor animal began to kick, and the little robber-girl laughed, and pulled down Gerda into bed with her.

「あなたはねているあいだ、ナイフをはなさないの。」と、ゲルダは、きみわるそうに、それをみました。

“Will you have that knife with you while you are asleep?” asked Gerda, looking at it in great fright.

「わたい、しょっちゅうナイフをもっているよ。」と、おいはぎのこむすめはこたえました。「なにがはじまるかわからないからね。それよか、もういちどカイちゃんって子の話をしてくれない、それから、どうしてこのひろい世界に、あてもなくでてきたのか、そのわけを話してくれないか。」

“I always sleep with the knife by me,” said the robber-girl. “No one knows what may happen. But now tell me again all about little Kay, and why you went out into the world.”

そこで、ゲルダははじめから、それをくりかえしました。森のはとが、頭の上のかごの中でくうくういっていました。ほかのはとはねむっていました。

Then Gerda repeated her story over again, while the wood-pigeons in the cage over her cooed, and the other pigeons slept.

おいはぎのこむすめは、かた手をゲルダのくびにかけて、かた手にはナイフをもったまま、大いびきをかいてねてしまいました。けれども、ゲルダは、目をつぶることもできませんでした。ゲルダは、いったい、じぶんは生かしておかれるのか、ころされるのか、まるでわかりませんでした。

The little robber-girl put one arm across Gerda’s neck, and held the knife in the other, and was soon fast asleep and snoring. But Gerda could not close her eyes at all; she knew not whether she was to live or die.

たき火のぐるりをかこんで、おいはぎたちは、お酒をのんだり、歌をうたったりしていました。そのなかで、ばあさんがとんぼをきりました。

The robbers sat round the fire, singing and drinking, and the old woman stumbled about.

ちいさな女の子にとっては、そのありさまを見るだけで、こわいことでした。

It was a terrible sight for a little girl to witness.

そのとき、森のはとが、こういいました。
「くう、くう、わたしたち、カイちゃんを見ましたよ。一わの白いめんどりが、カイちゃんのそりをはこんでいました。カイちゃんは雪の女王のそりにのって、わたしたちが、巣にねていると、森のすぐ上を通っていったのですよ。雪の女王は、わたしたち子ばとに、つめたいいきをふきかけて、ころしてしまいました。たすかったのは、わたしたち二わだけ、くう、くう。」

Then the wood-pigeons said, “Coo, coo; we have seen little Kay. A white fowl carried his sledge, and he sat in the carriage of the Snow Queen, which drove through the wood while we were lying in our nest. She blew upon us, and all the young ones died excepting us two. Coo, coo.”

「まあ、なにをそこでいってるの。」と、ゲルダが、つい大きなこえをしました。「その雪の女王さまは、どこへいったのでしょうね。そのさきのこと、なにかしっていて。おしえてよ。」

“What are you saying up there?” cried Gerda. “Where was the Snow Queen going? Do you know anything about it?”

「たぶん、ラップランドのほうへいったのでしょうよ。そこには、年中、氷や雪がありますからね。まあ、つながれている、となかいに、きいてごらんなさい。」

“She was most likely travelling to Lapland, where there is always snow and ice. Ask the reindeer that is fastened up there with a rope.”

すると、となかいがひきとって、「そこには年中、氷や雪があって、それはすばらしいみごとなものですよ。」といいました。
「そこでは大きな、きらきら光る谷まを、自由にはしりまわることができますし、雪の女王は、そこに夏のテントをもっています。でも女王のりっぱな本城ほんじょうは、もっと北極のほうの、スピッツベルゲンという島の上にあるのです。」

“Yes, there is always snow and ice,” said the reindeer; “and it is a glorious place; you can leap and run about freely on the sparkling ice plains. The Snow Queen has her summer tent there, but her strong castle is at the North Pole, on an island called Spitzbergen.”

「ああ、カイちゃんは、すきなカイちゃんは。」と、ゲルダはためいきをつきました。

“Oh, Kay, little Kay!” sighed Gerda.

「しずかにしなよ。しないと、ナイフをからだにつきさすよ。」と、おいはぎのこむすめがいいました。

“Lie still,” said the robber-girl, “or I shall run my knife into your body.”

あさになって、ゲルダは、森のはとが話したことを、すっかりおいはぎのこむすめに話しました。するとむすめは、たいそうまじめになって、うなずきながら、
「まあいいや。どっちにしてもおなじことだ。」と、いいました。そして、「おまえ、ラップランドって、どこにあるのかしってるのかい。」と、むすめは、となかいにたずねました。

In the morning Gerda told her all that the wood-pigeons had said; and the little robber-girl looked quite serious, and nodded her head, and said, “That is all talk, that is all talk. Do you know where Lapland is?” she asked the reindeer.

「わたしほど、それをよくしっているものがございましょうか。」と、目をかがやかしながら、となかいがこたえました。「わたしはそこで生まれて、そだったのです。わたしはそこで、雪の野原を、はしりまわっていました。」

“Who should know better than I do?” said the animal, while his eyes sparkled. “I was born and brought up there, and used to run about the snow-covered plains.”

「ごらん。みんなでかけていってしまうだろう。おっかさんだけがうちにいる。おっかさんは、ずっとうちにのこっているのよ。でもおひるちかくなると、大きなびんからお酒をのんで、すこしのあいだ、ひるねするから、そのとき、おまえにいいことをしてあげようよ。」と、おいはぎのこむすめはゲルダにいいました。

“Now listen,” said the robber-girl; “all our men are gone away,— only mother is here, and here she will stay; but at noon she always drinks out of a great bottle, and afterwards sleeps for a little while; and then, I’ll do something for you.”

それから女の子は、ぱんと、ねどこからはねおきて、おっかさんのくびのまわりにかじりついて、おっかさんのひげをひっぱりながら、こういいました。
「かわいい、めやぎさん、おはようございます。」

Then she jumped out of bed, clasped her mother round the neck, and pulled her by the beard, crying, “My own little nanny goat, good morning.”

すると、おっかさんは、女の子のはなが赤くなったり紫色むらさきいろになったりするまで、ゆびではじきました。でもこれは、かわいくてたまらない心からすることでした。

Then her mother filliped her nose till it was quite red; yet she did it all for love.

おっかさんが、びんのお酒をのんで、ねてしまったとき、おいはぎのこむすめは、となかいのところへいって、こういいました。
「わたしはもっと、なんべんも、なんべんも、ナイフでおまえを、くすぐってやりたいのだよ。だって、ずいぶんおかしいんだもの、でも、もういいさ。あたい、おまえがラップランドへ行けるように、つなをほどいてにがしてやろう。けれど、おまえはせっせとはしって、この子を、この子のおともだちのいる、雪の女王のごてんへ、つれていかなければいけないよ。

When the mother had drunk out of the bottle, and was gone to sleep, the little robber-maiden went to the reindeer, and said, “I should like very much to tickle your neck a few times more with my knife, for it makes you look so funny; but never mind,—I will untie your cord, and set you free, so that you may run away to Lapland; but you must make good use of your legs, and carry this little maiden to the castle of the Snow Queen, where her play-fellow is.

おまえ、この子があたいに話していたこと、きいていたろう。とても大きなこえで話したし、おまえも耳をすまして、きいていたのだから。」

You have heard what she told me, for she spoke loud enough, and you were listening.”

となかいはよろこんで、高くはねあがりました。その背中においはぎのこむすめは、ゲルダをのせてやりました。そして用心ようじんぶかく、ゲルダをしっかりいわえつけて、その上、くらのかわりに、ちいさなふとんまで、しいてやりました。

Then the reindeer jumped for joy; and the little robber-girl lifted Gerda on his back, and had the forethought to tie her on, and even to give her her own little cushion to sit on.

「まあ、どうでもいいや。」と、こむすめはいいました。「そら、おまえの毛皮のながぐつだよ。だんだんさむくなるからね。マッフはきれいだからもらっておくわ。けれど、おまえにさむいおもいはさせないわ。ほら、おっかさんの大きなまる手ぶくろがある。おまえなら、ひじのところまで、ちょうどとどくだろう。まあ、これをはめると、おまえの手が、まるであたいのいやなおっかさんの手のようだよ。」と、むすめはいいました。

“Here are your fur boots for you,” said she; “for it will be very cold; but I must keep the muff; it is so pretty. However, you shall not be frozen for the want of it; here are my mother’s large warm mittens; they will reach up to your elbows. Let me put them on. There, now your hands look just like my mother’s.”

ゲルダは、もううれしくて、涙なみだがこぼれました。

But Gerda wept for joy.

「泣くなんて、いやなことだね。」と、おいはぎのこむすめはいいました。「ほんとは、うれしいはずじゃないの。さあ、ここにふたつ、パンのかたまりと、ハムがあるわ。これだけあれば、ひもじいおもいはしないだろう。」

“I don’t like to see you fret,” said the little robber-girl; “you ought to look quite happy now; and here are two loaves and a ham, so that you need not starve.”

これらの品じなは、となかいの背中のうしろにいわえつけられました。おいはぎのむすめは戸をあけて、大きな犬をだまして、中にいれておいて、それから、よくきれるナイフでつなをきると、となかいにむかっていいました。
「さあ、はしって。そのかわり、その子に、よく気をつけてやってよ。」

These were fastened on the reindeer, and then the little robber-maiden opened the door, coaxed in all the great dogs, and then cut the string with which the reindeer was fastened, with her sharp knife, and said, “Now run, but mind you take good care of the little girl.”

そのとき、ゲルダは、大きなまる手ぶくろをはめた両手を、おいはぎのこむすめのほうにさしのばして、「さようなら。」といいました。とたんに、となかいはかけだしました。木の根、岩かどをとびこえ、大きな森をつきぬけて、沼地や草原もかまわず、いっしょうけんめい、まっしぐらにはしっていきました。

And then Gerda stretched out her hand, with the great mitten on it, towards the little robber-girl, and said, “Farewell,” and away flew the reindeer, over stumps and stones, through the great forest, over marshes and plains, as quickly as he could.

おおかみがほえ、わたりがらすがこえをたてました。ひゅッ、ひゅッ、空で、なにか音がしました。それはまるで花火があがったように。

The wolves howled, and the ravens screamed; while up in the sky quivered red lights like flames of fire.

「あれがわたしのなつかしい北極オーロラ光です。」と、となかいがいいました。「ごらんなさい。なんてよく、かがやいているでしょう。」
それからとなかいは、ひるも夜も、前よりももっとはやくはしって行きました。
パンのかたまりもなくなりました。ハムもたべつくしました。となかいとゲルダとは、ラップランドにつきました。

“There are my old northern lights,” said the reindeer; “see how they flash.” And he ran on day and night still faster and faster, but the loaves and the ham were all eaten by the time they reached Lapland.

第六のお話。ラップランドの女とフィンランドの女

Sixth Story: The Lapland Woman and the Finland Woman

ちいさな、そまつなこやの前で、となかいはとまりました。そのこやはたいそうみすぼらしくて、屋根やねは地面じめんとすれすれのところまでも、おおいかぶさっていました。そして、戸口がたいそうひくくついているものですから、うちの人が出たり、はいったりするときには、はらばいになって、そこをくぐらなければなりませんでした。

They stopped at a little hut; it was very mean looking; the roof sloped nearly down to the ground, and the door was so low that the family had to creep in on their hands and knees, when they went in and out.

その家には、たったひとり年とったラップランドの女がいて、鯨油げいゆランプのそばで、おさかなをやいていました。となかいはそのおばあさんに、ゲルダのことをすっかり話してきかせました。でも、その前にじぶんのことをまず話しました。となかいは、じぶんの話のほうが、ゲルダの話よりたいせつだとおもったからでした。 ゲルダはさむさに、ひどくやられていて、口をきくことができませんでした。

There was no one at home but an old Lapland woman, who was cooking fish by the light of a train-oil lamp. The reindeer told her all about Gerda’s story, after having first told his own, which seemed to him the most important, but Gerda was so pinched with the cold that she could not speak.

「やれやれ、それはかわいそうに。」と、ラップランドの女はいいました。「おまえたちはまだまだ、ずいぶんとおくはしって行かなければならないよ。百マイル以上も北のフィンマルケンのおくふかくはいらなければならないのだよ。雪の女王はそこにいて、まい晩、青い光を出す花火をもやしているのさ。

“Oh, you poor things,” said the Lapland woman, “you have a long way to go yet. You must travel more than a hundred miles farther, to Finland. The Snow Queen lives there now, and she burns Bengal lights every evening.

わたしは紙をもっていないから、干鱈ひだらのうえに、てがみをかいてあげよう。これをフィンランドの女のところへもっておいで。その女のほうが、わたしよりもくわしく、なんでも教えてくれるだろうからね。」

I will write a few words on a dried stock-fish, for I have no paper, and you can take it from me to the Finland woman who lives there; she can give you better information than I can.”

さてゲルダのからだもあたたまり、たべものやのみものでげんきをつけてもらったとき、ラップランドの女は、干鱈ひだらに、ふたことみこと、もんくをかきつけて、それをたいせつにもっていくように、といってだしました。ゲルダは、またとなかいにいわえつけられてでかけました。

So when Gerda was warmed, and had taken something to eat and drink, the woman wrote a few words on the dried fish, and told Gerda to take great care of it. Then she tied her again on the reindeer, and he set off at full speed.

ひゅッひゅッ、空の上でまたいいました。ひと晩中、この上もなくうつくしい青色をした、極光オーロラがもえていました。――さて、こうして、となかいとゲルダとは、フィンマルケンにつきました。そして、フィンランドの女の家のえんとつを、こつこつたたきました。だってその家には、戸口もついていませんでした。

Flash, flash, went the beautiful blue northern lights in the air the whole night long. And at length they reached Finland, and knocked at the chimney of the Finland woman’s hut, for it had no door above the ground.

家の中は、たいへんあついので、その女の人は、まるではだか同様でした。せいのひくいむさくるしいようすの女でした。

They crept in, but it was so terribly hot inside that that woman wore scarcely any clothes; she was small and very dirty looking.

女はすぐに、ゲルダの着物や、手ぶくろや、ながぐつをぬがせました。そうしなければ、とてもあつくて、そこにはいられなかったからです。それから、となかいのあたまの上に、ひとかけ、氷のかたまりを、のせてやりました。

She loosened little Gerda’s dress, and took off the fur boots and the mittens, or Gerda would have been unable to bear the heat; and then she placed a piece of ice on the reindeer’s head, and read what was written on the dried fish.

そして、ひだらにかきつけてあるもんくを、三べんもくりかえしてよみました。そしてすっかりおぼえこんでしまうと、スープをこしらえる大なべの中へ、たらをなげこみました。そのたらはたべることができたからで、この女の人は、けっしてどんなものでも、むだにはしませんでした。

After she had read it three times, she knew it by heart, so she popped the fish into the soup saucepan, as she knew it was good to eat, and she never wasted anything.

さて、となかいは、まずじぶんのことを話して、それからゲルダのことを話しました。するとフィンランドの女は、そのりこうそうな目をしばたたいただけで、なにもいいませんでした。

The reindeer told his own story first, and then little Gerda’s, and the Finlander twinkled with her clever eyes, but she said nothing.

「あなたは、たいそう、かしこくていらっしゃいますね。」と、となかいは、いいました。「わたしはあなたが、いっぽんのより糸で、世界中の風をつなぐことがおできになると、きいております。もしも舟のりが、そのいちばんはじめのむすびめをほどくなら、つごうのいい追風がふきます。二ばんめのむすびめだったら、つよい風がふきます。三ばんめと四ばんめをほどくなら、森ごとふきたおすほどのあらしがふきすさみます。

“You are so clever,” said the reindeer; “I know you can tie all the winds of the world with a piece of twine. If a sailor unties one knot, he has a fair wind; when he unties the second, it blows hard; but if the third and fourth are loosened, then comes a storm, which will root up whole forests.

どうか、このむすめさんに、十二人りきがついて、しゅびよく雪の女王にかてますよう、のみものをひとつ、つくってやっていただけませんか。」

Cannot you give this little maiden something which will make her as strong as twelve men, to overcome the Snow Queen?”

「十二人りきかい。さぞ役にたつ(「たつ」は底本では「たっ」)だろうよ。」と、フィンランド(「フィンランド」は底本では「フィランド」)の女はくりかえしていいました。

“The Power of twelve men!” said the Finland woman; “that would be of very little use.”

それから女の人は、たなのところへいって、大きな毛皮のまいたものをもってきてひろげました。それには、ふしぎなもんじがかいてありましたが、フィンランドの女は、ひたいから、あせがたれるまで、それをよみかえしました。

But she went to a shelf and took down and unrolled a large skin, on which were inscribed wonderful characters, and she read till the perspiration ran down from her forehead.

でも、となかいは、かわいいゲルダのために、またいっしょうけんめい、その女の人にたのみました。ゲルダも目に涙をいっぱいためて、おがむように、フィンランドの女を見あげました。女はまた目をしばたたきはじめました。そして、となかいをすみのほうへつれていって、そのあたまにあたらしい氷をのせてやりながら、こうつぶやきました。

But the reindeer begged so hard for little Gerda, and Gerda looked at the Finland woman with such beseeching tearful eyes, that her own eyes began to twinkle again; so she drew the reindeer into a corner, and whispered to him while she laid a fresh piece of ice on his head,

「カイって子は、ほんとうに雪の女王のお城にいるのだよ。そして、そこにあるものはなんでも気にいってしまって、世界にこんないいところはないとおもっているんだよ。けれどそれというのも、あれの目のなかには、鏡のかけらがはいっているし、しんぞうのなかにだって、ちいさなかけらがはいっているからなのだよ。だからそんなものを、カイからとりだしてしまわないうちは、あれはけっしてまにんげんになることはできないし、いつまでも雪の女王のいうなりになっていることだろうよ。」

“Little Kay is really with the Snow Queen, but he finds everything there so much to his taste and his liking, that he believes it is the finest place in the world; but this is because he has a piece of broken glass in his heart, and a little piece of glass in his eye. These must be taken out, or he will never be a human being again, and the Snow Queen will retain her power over him.”

「では、どんなものにも、うちかつことのできる力になるようなものを、ゲルダちゃんにくださるわけにはいかないでしょうか。」

“But can you not give little Gerda something to help her to conquer this power?”

「このむすめに、うまれついてもっている力よりも、大きな力をさずけることは、わたしにはできないことなのだよ。まあ、それはおまえさんにも、あのむすめがいまもっている力が、どんなに大きな力だかわかるだろう。ごらん、どんなにして、いろいろと人間やどうぶつが、あのむすめひとりのためにしてやっているか、どんなにして、はだしのくせに、あのむすめがよくもこんなとおくまでやってこられたか。

“I can give her no greater power than she has already,” said the woman; “don’t you see how strong that is? How men and animals are obliged to serve her, and how well she has got through the world, barefooted as she is.

それだもの、あのむすめは、わたしたちから、力をえようとしてもだめなのだよ。それはあのむすめの心のなかにあるのだよ。それがかわいいむじゃきなこどもだというところにあるのだよ。

She cannot receive any power from me greater than she now has, which consists in her own purity and innocence of heart.

もし、あのむすめが、自分で雪の女王のところへ、でかけていって、カイからガラスのかけらをとりだすことができないようなら、まして、わたしたちの力におよばないことさ。

If she cannot herself obtain access to the Snow Queen, and remove the glass fragments from little Kay, we can do nothing to help her.

もうここから二マイルばかりで、雪の女王のお庭の入口になるから、おまえはそこまで、あの女の子をはこんでいって、雪の中で、赤い実みをつけてしげっている、大きな木やぶのところに、おろしてくるがいい。それで、もうよけいな口をきかないで、さっさとかえっておいで。」

Two miles from here the Snow Queen’s garden begins; you can carry the little girl so far, and set her down by the large bush which stands in the snow, covered with red berries. Do not stay gossiping, but come back here as quickly as you can.”

こういって、フィンランドの女は、ゲルダを、となかいのせなかにのせました。そこで、となかいは、ぜんそくりょくで、はしりだしました。

Then the Finland woman lifted little Gerda upon the reindeer, and he ran away with her as quickly as he could.